ナノスケールという極めて小さな世界では、粒の性質と波の性質とが共存した不思議な現象が現れます。原子や電子といったミクロな世界を支配する”量子力学”が描く性質で、我々が日ごろ目にする経験則で理解するのは容易ではありません。見ることだけでも大変な小さな世界ですが、最近の可視化技術の発展や成熟した微細加工技術により、自然には存在しない“小さな物質(ナノ構造)”を自由な発想で創りだし、新しい機能を持たせることができるようになってきました。新しい原理にもとづく工学的応用のアイデアの宝庫として、今後の発展が期待されています。
超伝導は小さな世界を支配する量子力学が我々の目前にマクロなスケールで現れる稀有な現象です。巨視的な量子現象と呼ばれ,電気抵抗がゼロとなる完全伝導性と磁場を排除する完全反磁性で特徴づけられます。超伝導体もナノスケールにすると新しい機能が生まれます。当研究室では極めて微弱な磁場あるは温度分布を可視化する超伝導センサやこれを用いた顕微鏡の開発を進めています。ダイヤモンドの欠陥を利用した新しい量子センサも取り入れ,極低温における新たな物性開拓を目指しています。
研究の分野:量子センサ,超伝導,マイクロ/ナノ構造,低次元量子現象,ダイヤモンドNV中心,渦糸物理
超伝導や固体中の電子スピンを利用して微弱な磁場や温度を検出する量子センサの開発を進めています。
キーワード:超伝導薄膜,ナノピペット,ジョセフソン効果,ダイヤモンドNV中心,電子スピン
ガラス管を先鋭化したナノピペットの先端に超伝導薄膜を成膜したナノサイズの超伝導センサ(ナノSQUID)を開発しています。 単一電子スピンを検出する磁束感度を目指しています。
キーワード:微小超伝導体,幾何学的閉じ込め, SQUID磁気顕微鏡
超伝導を特徴づけるコヒーレンス長または磁場侵入長程度のサイズに超伝導体を微細加工することにより,バルクな超伝導体には現れない新奇な量子渦状態を実験的に調べています。反渦と呼ばれる反対向きの量子渦を伴う量子渦状態や,超伝導体の形状を反映した幾何学的量子渦状態を走査SQUID顕微鏡で直接観測する実験を現在進めています。
キーワード:量子渦,周期弾性体,摩擦(スリップ),動的相転移
超伝導量子渦は超伝導体に流す電流により駆動(ローレンツ力またはマグナス力)を受け、その運動は電圧を発生します。このため渦糸の駆動力と速度の関係を電流と電圧の関係に焼き直して調べることができます。現在、ナノサイズのチャネル(線路)に閉じ込めることにより、固体界面の摩擦やスリップ現象、動的相転移象を調べています。
キーワード:層状物質、量子細線,位相スリップ,超伝導絶縁体転移
低次元超伝導体の超伝導と局在の競合問題,1次元細線における位相スリップ,量子相転移現象などの極低温における輸送特性を詳しく調べております。量子電流標準や量子ビットへの応用を目指しています。
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